2013年5月28日火曜日

ワークショップ 独におけるエネルギーシフト -再生可能エネルギー・電力自由化・地域再生- 第1部

前前回前前前回に引き続き、去る5月24日に行われたワークショップの模様です。
長くなるのでまたしても2部構成で提供いたします。
赤いとこだけでも読んで頂ければ幸いです。


●植田(うえ)和弘先生より導入

・2011年現在、日本の電力供給に占める水力以外の再生可能エネルギー電力の割合は1.4%のみ
日本は人的資源以外の資源に乏しい国だといわれるが、再生可能エネルギーについては相当なポテンシャルがあり、むしろ資源は豊富だといえる

・再生可能エネルギーの普及に向けては課題が多い
・接続優先権の問題
・普及に必要な費用をどう負担するか
・北海道や東北地方にポテンシャルが偏在しており、消費地から遠い

・再生可能エネルギーの普及促進のためには固定価格買取制度=FITのみでなく、発送電分離も重要
・エネルギーの民主化にも密接に関連する


●テレジア・バウアー氏

・ドイツの目標:2050年までに電力供給の80%、総エネルギー需要の50%を再生可能エネルギーでまかない、CO2を80%削減する

・"Green Industrial Revolution"「緑の産業革命」は市民によって推進されるもの
・気候変動を抑え、環境と調和する社会、経済を目指す
・技術的な変革だけでなく、社会的な変革も必要
・学術部門がもっと社会にアプローチしていく必要がある
・日独で世界を先導していける


手塚哲央氏(京都大学大学院エネルギー科学研究科・教授)
「再生可能エネルギー利用促進に向けた電力システムの再設計」

・日独の1次エネルギー供給、および電力供給に占める各エネルギー源の割合について
・経済の発展に伴い石油の消費量が増加、石油危機以降は石油のシェアが減少し、代わりに天然ガスと原子力の割合が増加

・供給が需要に適応するシステムから需要が供給に対応するシステムへの変革が必要
・巨大な設備による一極集中のシステムから小規模施設による分散型システムへの変革が必要

・暗闇の中の巨像の喩え
・各人が各所から視たのでは全体像を捉えることができない
・各分野の研究者が互いに協力し、エネルギーについていかに学び、教え、研究すべきか考えるべき


●アルミン・グルンヴァルト氏(カースルーエ工科大学・教授)
"Energy shift in Germany and the role of civil society"

・かつてドイツでも巨大な電力会社が4社あり、電力事業を独占、強力な政治的発言力を有していた
・市民が古い政治決定のあり方や結果に反対するようになり、エネルギー部門についてこれまで行われてきたトップダウン型の意思決定が批判されるように

・エネルギーに関する意思決定により多くの主体が関わる必要がある("government"から"governance"へ)
・トップダウン型とボトムアップ型の意思決定のバランスをどうとるかが重要

・ヨーロッパにおける新たな技術に対する評価(可能性とリスク)に関する経験の蓄積

・分散型エネルギーシステムへの以降に必要な施設がNIMBY的な(Not In My BackYard、必要性は認めるが自分の近所に設置することを嫌う、総論賛成各論反対と似ている、かも)扱いを受けることも
・例えば風力発電機についてその騒音や振動、日照を遮る、といったことを理由に反対される場合
・自らがその意思決定に参加したか、他者から押し付けられたかによって感じ方が変わることも多い


●長山浩章氏(京都大学国際交流推進機構国際交流推進センター・教授)
「日本の電力産業:福島原発事故後の改革への提言」

・エネルギー源の多様化(地熱、ロシアからの天然ガス、原子力の再稼働、洋上風力など)
・再生可能エネルギーの段階的な導入
・既存の事業者と新規参入者の公平な競争、その手段としての発送電分離
・送電システムの管理のため政治的、財政的に独立した監督組織
・地域をまたいだ系統接続
・エネルギーと電力分野におけるイノベーションが必要


○グルンヴァルト氏よりコメント

・日本のFITについて、太陽光発電の導入が相当な量にのぼっている。これをどうコントロールするつもりなのか。太陽光発電の導入が過剰になったスペインのケースもある
(植田氏より回答)
・買取価格しか調整手段はない。そもそもFIT導入から3年間は高い買取価格をつけて急速な普及を進める、という法律をつくっている。買取価格を下げるのはそれから

・(長山氏のプレゼンテーションについて)分散型エネルギーシステムに向けてのミクロの取り組みはどのようになっているのか
(長山氏より回答)
・スマートシティ構想などがある(グルンヴァルト氏は市民がどう参加してゆくのか、ということを念頭において質問したようでしたが、長山氏にはあまりその意図が伝わっていないようにわたしからはみえました)
(グルンヴァルト氏より再度コメント)
・例えば太陽光発電パネルに2kWhの蓄電池を併設すれば太陽光発電による電力の6割を自家消費することができ、系統への負担を大幅に減じることができる(蓄電池がない場合は自家消費できる割合は3割程度)


第2部に続く。

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