2013年5月23日木曜日

再エネ導入量~見せかけの罠

たまには真面目な話をしようと思います。
たくさん読むのが面倒な人はとりあえず赤字のところだけ読んでもらえればうれしいです。
参照元→再生可能エネルギー発電設備の導入状況を公表します(資源エネルギー庁)

昨年の7月から再生可能エネルギーの固定価格買取制度がはじまりまして、太陽光・風力・中水力・バイオマス・地熱の各発電方式による電力は一定の価格で買い上げてもらえることになりました。
これらの発電方式に対して利益を保証することで投資を呼び込み、普及を促そうというわけです。

冒頭の資料によると2012年4月から2013年2月までの再生可能エネルギー発電設備の導入量は166.2万kWだということです。
設備容量としては標準的な原子力発電所の1.5倍強に相当します。
2011年度末までの累積導入量が2,000万kWですから、今まで20年以上かかって積み重ねてきた分の8%も1年で増やしてきたことになるでしょうか。
まだあと2ヶ月残っているので最終的には10%に近いところまでいくかもしれません。

そのこと自体はまずまず喜ばしいことですが、単純にこれでいいというわけではありません。
問題は山積みです。
むしろ問題しかないといっていいかもしれません。
あまり手広くやってたくさん裏付けをとってこないといけなくなるのが面倒なので、簡単なところでいくつか指摘してみたいと思います。

まず最初に、電力に関しては設備容量=発電量ではありません。
設備容量というのはパワプロでいう最高球速のようなもので、最も条件のよいときにどれくらい電力を生産できるかという値です。
いくら設備容量が大きくても設備利用率が低ければ電力供給には貢献しません。

導入量166.2万kWのうちおよそ94%にあたる155.9万kWが太陽光発電です。
太陽光発電の設備利用率はだいたい10%台前半のようです。
参考→コスト等検証委員会報告書(平成23年12月19日)参考資料1
    資源エネルギー庁・電力調査統計 平成24年度2-(4)
他の発電方法と比べると太陽光発電はかなり非効率です。

また、発電された電力が使われなければ火力発電の炊き減らし、化石燃料の消費削減にあまり貢献しません。
あるいは発電設備が既存の電力系統にきちんと接続されて生産した電気を使える状態になったとしても、発電量が不安定なため瞬間的に電力が不足する事態を防ぐ目的で火力発電を待機させておく必要があるという問題もあります。

そもそも太陽光発電が導入量の9割以上という点も問題です。
挙動の違う発電方式を色々と揃えた方がシステム全体としては安定をとりやすくなります。
打線の中で全員が同じ時期に調子がよくなるより、誰かが調子が悪いときは他の誰かが調子がよくてお互いにカバーしあう方がシーズン通して安定した得点力を発揮できるのと同じです。

それから認定を受けた設備容量と運転開始した設備容量の差も問題です。
リンク先の別紙1をみると、「2012年4月~2013年2月末までに運転開始した設備容量」166.2万kWに対して、「(参考)2月末までに認定を受けた設備容量」は1305.9万kWと文字通り桁違いです。

内訳をみると最も運転開始した~と認定を受けた~で差があるのは太陽光(非住宅)です。
認定容量1102.2万kWに対し運転開始容量42.2万kWで、絶対量でみても割合で見ても運転開始した設備容量がこの中で最も少なくなっています。

これをどう説明するかですが、さしあたり以下2点をあげておきます。

1つ目は認定から設置までに物理的に時間がかかること。
パネルを買って運んで設置して、電線を引いてなどなどそれなりに時間がかかりそうです。
設備が大きくなれば電力を受け入れる電力会社側にも準備が必要ですから、そのあたりもあるかもしれません。

2つ目は認定を受けた事業主が太陽光パネルの値段が下がるのを待っているのではないか、ということ。
実は固定価格買取制度に則って電力を買い取ってもらえる認定を受けても、いついつまでに設備の運転を開始しなければならないという規定はありません。
参考→電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法

よって投資する側は認定を受けてすぐに設備を設置するよりも、設備の値段が下がるのを待って設置したほうが儲かります。
固定価格買取制度はそもそもの原則として年を経るに従って買取価格を下げていくべきものなので、買取価格が高いうちに認定だけとっておくという行動に出る企業が出るのは当然です。

いざ実際に発電がはじまってから行われる電力の買い取りは電力需要者、つまりわたしたちが払った電気代から支払われます。
高い買取価格はそのままわたしたちに降りてくるわけです。

認定容量は2月の1ヶ月で倍になっています。
買取価格は年度毎に改定されるので、買取価格が高いうちに認定をとろうという駆け込み申請を疑ってもあながち間違いとはいえないと思います。
この傾向は来月発表されると思われる3月末までの容量にもっと如実に現れてきそうです。



いやはや罠だらけでございます。
めんどうだったのであまり取り上げませんでしたが、再生可能エネルギーの系統接続や系統強化のために必要な投資も大きなテーマです。
そして発送電分離も。

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