2013年5月29日水曜日

ワークショップ 独におけるエネルギーシフト -再生可能エネルギー・電力自由化・地域再生- 第2部

前回の続きです。


●アイケ・ヴェーバー氏(フラウンホーファー・ソーラーエネルギーシステム研究所・教授)
"The Energy Transition as an Economic Challenge and Opportunity"

・破滅的な気候変動の危険性および化石燃料の有限性ゆえに、エネルギーシフトが望ましい
・この分野で世界に先がけて行動することにより「先行者の利益」を得ることもできる

・日本は再生可能エネルギーの豊かな国
・エネルギーを貯蔵する技術の開発、電力網の拡大が必要

・世界のエネルギー需要は16TWy(2009年)、2050年には26TWyに
・太陽光は毎年1000TWy(※1、2)分降り注いでおり、これこそが未来のエネルギー源である(石油やガスは有限で太陽光に比べて総エネルギー量も少ない)
・エネルギーに関して保守的なIEAですら2050年までに3000GWの太陽光発電設備の導入を見込んでいる
※(1)1TWy(テラワットイヤー)=24hours×365days×10^9kWh=8.67×10^12kWh
※(2)太陽光エネルギーの賦存量はメモに自信ががなかったのでWikipediaから数字をとっています

・将来のドイツの電力消費水準はエネルギー効率の向上と交通部門への電力エネルギー導入の効果が相殺し、現在とあまり変わらない見込み
・電力の供給側は再生可能エネルギーへとシフトしていく

・Decentral=非集中型、スマートグリッド
・超電導電力網
・電力の流動性

・電力網の安定性向上のためには多様な再生可能エネルギーの導入が必要
・電力を季節に応じて貯蔵、消費するシステム(夏に貯蔵して冬の暖房に使用する、など)

・エネルギーシフトは不可避であり、重要な役割を果たすのは太陽光と風力
・日本にはドイツより多くの資源がある

・エネルギーシフトには初期コストがかかるが、再生可能エネルギー中心のエネルギーシステムが完成すれば電力価格は現在と同じ水準に落ち着く、エネルギーシフトを行わなければ将来の電力価格は現在よりも高くなる
(出典がありましたが見つけられず……)


諸富徹氏(京都大学大学院経済学研究科・教授)
「再生可能エネルギーの促進と、地方自治体のイニシアティブの役割-長野県飯田市の例」

ドイツでは再生可能エネルギーへの投資のうち個人の投資分が37.4%、農家が19.8%、個人事業家が8.1%などとなっており(2010年)企業体以外からの投資が大きな割合を占めている
・日本の現状では大企業が再生可能エネルギー市場をほぼ独占しており、住民による地域主体の事業を促進していくことが課題

・飯田市における住民主体のNPO「おひさま進歩」(2004年~)
・幼稚園の屋根に3kWの太陽光パネルを住民からの寄付により設置、教育効果をあげている
・「おひさま進歩」は2004年12月に「おひさま進歩エネルギー有限会社」を立ち上げ、太陽光発電事業を開始
・2ヶ月で460の個人、法人から2億150万円の出資を受け事業開始
・年率1~3%のファンドを運営
・現在は小水力発電の導入も検討中

・住民または住民が設立した組織が事業主体となること
・収入増や雇用の創出にも効果
・地域の金融機関と協力し、地域の中で資本が還流する仕組みを
・住民の「社会資本」への投資が必要


●ハビル・ウルズラ・アイカー氏(シュトゥットガルト応用科学大学持続可能エネルギー技術研究センター所長・教授)
"Urban energy efficiency and renewables - case studies from Baden Wüttemberg"

・エネルギー需要を減少させるため住宅のエネルギー効率の向上に取り組んでいる
・住宅を3Dモデリングして分析することで、建替え時の効果的な断熱構造の導入につなげる
・エネルギー効率的な都市のエネルギー消費の50~80%はその地域の再生可能エネルギーでまかなえる


●ヴォルフマン・レッセル氏(シュトゥットガルト大学総長・教授)
"Best practice examples of energy shift - The impact of university research on energy shift"

・製造業におけるエネルギー効率向上の重要性
・産業部門はドイツの最終エネルギー消費量の3割を占めている
・産業部門でのエネルギーロスについてはまだまだ改善の余地がある
・産学が連携して研究開発を行なっている


森晶寿氏(京都大学大学院地球環境学堂・准教授)よりコメント

・ドイツの再生可能エネルギー導入による雇用創出について、設備そのものは中国や韓国が生産していることが多い。その点も考慮すると経済に与える影響はどのようになるか
(ヴェーバー氏より回答)
・設備のうち50%はドイツで生産しているものを使用しており、再生可能エネルギーへの投資のうち60%は資本が国内に留まっている
・太陽光発電で中国が強いのは最新の設備を積極的に導入しているためで、人件費が安いからではない、政府からの援助も重要な役割を果たしている
・関税を使って輸入を制限するのは好ましくない
・生産にも投資促す仕組み必要
・増える需要に対応するため、生産側にも変化が必要



最も印象に残ったのはヴェーバー氏のプレゼンテーションの中の「エネルギーシフトには初期コストがかかるが、再生可能エネルギー中心のエネルギーシステムが完成すれば電力価格は現在と同じ水準に落ち着く、エネルギーシフトを行わなければ将来の電力価格は現在よりも高くなる」という箇所でした。
どのようなモデル、試算から導き出された結論なのか、ぜひ自分で検証してみたいところです。
数年後に……。

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