2013年7月23日火曜日

『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』を読む


こんな本です。

Twitterで津田大介さんをフォローしていて、津田さんがやたら宣伝RTをするので買ってしまいました。
エネルギーについて勉強する人間のはしくれとして、読んでおいたほうがベターだろうと思ったのと、純粋に興味があって注文してみました。

はじめに断っておきますと、この記事はステマです(笑)
しかしステマって自ら名乗り出るともはやステルスではないのでマですかね。
マーケティングのマ、ただの宣伝です(笑)

冗談はさておき、エネルギー、特に原子力、あるいは福島の復興について興味のある人にとっては間違いなく有益な読み物だと思います。
広範囲に影響を及ぼし収束のつかない原子力発電所事故という点でチェルノブイリと福島は共通していて、数々の差異にも関わらず参考になる部分が多々ありそうです。

内容についてはgenronサイトの目次に譲りまして、ここでは特にわたしが印象に残ったことについて3つほど取り上げてみようと思います。



まず、写真です。
チェルノブイリ、そこで働く人々のために建設された街・プリピャチ。
廃墟、石棺、手入れされず野放しになった森、事故の記憶を語り継ぐために作られた公園や博物館。
チェルノブイリを取り巻く様々な人。

チェルノブイリというと悲劇という印象があって、もちろん悲劇はあったけれどもそれだけではない別のものもたくさんあるということ。
単純なことばに収斂できないものがある、ということが写真だけを見ていても感じられるようです。


一冊全体を通読して感じたのは、事故にポジティブな価値があるとは到底いえないけれども、事故が起こってしまったことを認めてそこからポジティブな価値を生み出そうとする意志をチェルノブイリ周辺の人たちは持っている、あるいは持とうとしているのではないかということです。
世界中の人がチェルノブイリで起きたことを適切に理解し、忘れないことで同じ悲劇を繰り返さないという価値。
「ゾーン」に観光客がやってくることに付随する経済波及効果という価値。

もちろんそうした意志は事故から年月が過ぎたからこそあらわれたという面もあると思います。
一方で事故後の早い段階から記憶を、証拠を残そうとする動きもあったことは見逃せない点のように感じました。
福島についても何かの形でその記憶を引き継いでゆくことは間違いなく必要だと思いますが、チェルノブイリのように大きな事件であってもそのために多大な努力が必要になっていることは示唆的だと思います。

東日本大震災からはチェルノブイリと比べて日も浅く、残す、語るということに対して被災した方々が抵抗を覚えても、何もしないでいればいつの間にか手遅れになってしまうのではないか、そんな印象を受けました。
私は震災のあと東北を訪れたことがないので偉そうなことはいえませんが、学生のうち、時間の自由がきくうちになんとしても行って見なければという思いを新たにしました。

自分の専門分野はマクロなエネルギー政策、というところに置きながら、何ができるだろうかと考えています。


編者、東さんのことばから一箇所だけ引用します。

「福島第一原発事故をめぐる言葉が徐々に硬くなり、いわば『退屈』になり、そして世間の注目を失いつつあるように見えるいま、ぼくたちはもういちど『楽しむこと』のシリアスな価値について考えてもいいのではないかと思う。希望は喜びのなかからしか生まれないのだから」

楽しくないと続かない、とはよくいったものだと思います。
不謹慎ではないか、バッシングを受けるのではないか、と憂慮して口をつぐんでしまう前に、本当に大事なことは何か、きちんと自分で考えて堂々とやればいいのだろうと思います。
何かあれば、自分の筋をきちんと説明して戦えばいいし、その過程で自分の誤りに気がつけば謝罪して訂正すればいい。
絶対的な真理などというものはそうそう存在しないことを認め、きちんとした論理で自分の考えを構築し、違う論理でできた考えと出会ったら対話を通じて自分の至らないところを修正したり、相手の不足を指摘したりしてお互いによいものをつくってゆく。
そういう努力をする人間でいたいと思う次第です。


何だかチェルノブイリと全然違う話になってしまいました。
ちょっと先日終わった選挙に引っ張られてしまった感があります。
それはそれで、そういう文脈のもとに書かれたものと思ってもらえれば。

何だか堅くなりすぎて自分でも違和感を覚えます(笑)
とにかく買っても借りてもいいから、全部読んでもちょっとかじるだけでも、読んでみると新しい発見があることは間違いありません。


(追記)
私自身のコアな関心分野はマクロなエネルギー政策です。
エネルギー関連の投稿はラベル「エネルギーのこと」からどうぞ。

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